# シュメール語文法入門
CDLI のプレプリントサーバにアメリカの UC バークレーでシュメール語を教えていた Daniel.A.Foxvog が書いたシュメール語文法書が登録されていて、自由にダウンロードできる。
https://cdli.mpiwg-berlin.mpg.de/articles/cdlp/2.0 (opens new window)
こちらの一部(書記法、音韻論、名詞)を翻訳したので公開する。原著はクリエイティブ・コモンズCC BY 4.0 (opens new window) で公開されていて、このライセンスに従って自由に改変・再配布できる。
This work, "シュメール語文法入門", is adapted from "Introduction to Sumerian Grammar by Daniel A Foxvog, used under CC BY 4.0. "シュメール語文法入門" is licensed under CC BY 4.0 by uyum.
この翻訳自体も CC BY 4.0 とする。
# 経緯
紙の本は Amazon でも販売しているけど、こちらは 2014 年版で CDLI に登録されているのは 2016 年版。 https://www.amazon.co.jp/Introduction-Sumerian-Grammar-Daniel-Foxvog/dp/1500724262 (opens new window)
この本を知ったのが 2019 年ごろかな。 入門書でなにしろ無料なので独学でシュメール語を勉強するのにちょうどよくて、これをもとにシュメール語のいろはを学んだ。
で、これを読んでいるときに、あんまり英語が得意でない私は読んでいてもなかなか頭に入ってこないので、まるごと翻訳して日本語にしてから読んだらいいじゃんという天才的な考えに至ったのであった。
そんなわけでパラグラフごとに PDF からテキストエディタにコピペして、機械翻訳の力もおおいに借りつつ翻訳していった。言語学用語の訳と解釈には三省堂の「明解言語学辞典 (opens new window)」と東京大学出版会の「言語学 (opens new window)」が頼りになった。
音韻論のあたりまでは楽しくやっていたのだけど、動詞のチェーンとか格表示のあたりでわっかんねーってなった。わからないというか、学んだ文法をもとに「イナンナの冥界下り」とか「イナンナとエビフ」とかを読み解こうとしてもぜんぜんうまくいかなかったのである。それはまあ当たり前で、四千年前の生のテキストに文法書ひとつの生兵法で立ち向かうのは無理がある。そもそもそんなきれいな文法通りに書かれていない。たぶん。
それでいったんまるごと翻訳プロジェクトは中断して、でもそれからもたびたびつまみ食い的に読みながら楔形文字文化に親しんでいろいろやってきたのがここ数年である。翻訳したものを公開するつもりはもともとないし、そんな権利もなかった。もしかしたら直接フォクスヴォグ先生にこんなのできたんですけどって交渉したら公開させてもらえるかも、と思わないでもなかったけど、自分が読む分には不自由しなかったのでそのままになっていた。
さて、当時この文法書の PDF ファイルがホストされていた CDLI の WEB サイトは英オックスフォード大学にあったんだけど、2022 年にリニューアルすると同時に独マックスプランク研究所のサーバに引っ越した。たぶんそのタイミングだと思うのだけど、プレプリントのドキュメントに CC-BY 表示がされるようになった。引っ越し以降に公開された PDF には 1 ページ目に明示的に CC-BY 表記がされているし、それ以前のものにもダウンロードページにライセンスが書かれている。
こんな感じ。これを見つけて、えーっじゃあ前に翻訳したやつ公開できるじゃないかってなったのが先週くらいで、それから翻訳を見直したり組版を調整したりしてつくりなおしたのが冒頭のやつ。
今回あらためてじっくり読み直してみたけど、やっぱりフォックスヴォグ先生の文法書は読みやすい、気がする。説明が丁寧だ。
翻訳が文法までたどりついてないから文法書ではないんだけど、楔形文字やシュメール文明に興味のあるひとはじゅうぶん楽しめるとおもう。楽しんでもらえるといいな。
今なら翻訳の続きももうちょっとできるんじゃないかという気もするので、続編ができたらまた公開します。
# 更新履歴
# 2023-12-02 初版
# 2023-12-03 誤記訂正
書記法 C. 記号や語を繋ぐための規約 kušgur21(É.ÍB)ùr
III.正書法 音節記号èn ba-na-tararとĝeštugの綴り方の楔形文字表記
# 2024-03-15 改訂
全面改訂しました。